ほーむ☆めいど。その1
不意に降りてきた、家族話。ルルとスザクが両親で、ナナリーとロロが姉弟。
今まで苦手な地雷だった子供話…。どんどん変な原野を開拓しているなあ。
えと。一応真面目な設定もあるのですが、それは追々に。(つまり、続ける気ありあり)
あ。ルルもスザクも男です。性転換はなしです。
以下、書き落とし文。
◆
ロロは悲鳴とも罵倒ともつかない引きつった声を上げた。
目の前には正体の分からない獣が、うなり声をあげながらロロを威嚇している。
ロロは自分が冷や汗をかいていることさえ気づけず、大きな目を更に見開いて獣を見つめることしかできない。
あの鋭い歯に噛み千切られるのか。あの生暖かい口内で咀嚼されるのか。
たった10年しか生きていない。その人生が、こんなところで終わるのか?
死にたくない!まだ何もしていない!
生まれて初めて命の危険に晒されたロロは痛切に思った。
死にたくない!
脳裏に浮かんだのは、大好きな大好きなルルーシュ父さんの顔。
綺麗で優しいルルーシュに会えなくなるのは嫌だ。
がくがく震える脚に、命令する。
動け!動け!
全身が心臓になってしまったかのように、鼓動の音だけで体中がいっぱいになる。
そして。
瞬間の空白を感じた瞬間、ロロは駆けだしていた。
精一杯、両脚を動かす。
しかし、そこは舗装されているどころか、森の中、どこに道があるかさえも判らない悪路。
坂有り岩有り根っこ有りの障害物オンパレードのオフロードだ。
追われている恐怖に耐えながら、ロロは走る。ひたすら走るが。
同年代の子供に比べても体力もなく不器用なロロは、木の根っこにつまづいた。
走っていた勢いのまま、軽い体が空を飛ぶ。
もうダメだ。
そう思った瞬間に、ふんわりと、あり得ない柔らかさで宙を浮いていた体を受け止められた。
「ごめんね。ロロ、もう大丈夫だよ」
耳元で囁かれた言葉に緊張の糸がぷっつり切れた。
◆
文明社会から突然切り離されたロロは不満だらけだった。
ふかふかのベッド。暖かく清潔な家。優しい笑顔のルルーシュ。
ロロを、彼の大好きで大切な世界から無理やり引きはがした野蛮人は、本当なら近くにいるのも嫌なのだけど。でも、人の存在しない森の中で、彼しか頼る相手はいない。
「よく走れたね」
森の中を走ったときに手足は小さな草や小枝で傷ついていた。一つ一つは掠り傷だが、安心した途端、ひりひりと痛みだす。
ぶすっとしたままのロロの傷をスザクは丁寧に手当てしていく。
「…ルルーシュに、会いたいから」
長い時間があいてからのロロの答えを、だがスザクは間違えなかった。
「うん。ルルーシュに会いたかったから、頑張って走ったんだね」
向けられる笑顔にロロはむっとする。
ルルーシュはロロのことをとても大切にしてくれている。愛されていると判る。
だけど。
ルルーシュのスザクに対する笑顔は、別物だ。
どんなにルルーシュがスザクのことを好きなのか、見ているだけで解るから。
だからロロはスザクが嫌いなのに。
「1カ月だよ。それがルルーシュとの約束の期間だから。頑張ろうね、ロロ」
あからさまな拒否を示すロロをスザクは笑顔で受け入れる。
それは、家でも変わらないはずなのだが。
どんなに反抗しようとも、スザクは変わらない。文明から切り離されたこの無人島では、その存在を頼もしく感じてしまった。
◆
地球最後の人間になろうとも、スザクなら生き残れるかもしれない。
1週間と経たないうちに、ロロも無人島での生活に慣れていく。
スザクは極めて優秀で頼りがいのあるサバイバルの先生だった。
安全と快適。
スザクが最初にしたのは住処を造ることだった。周りの地形を確認し、獣たちから身を守れる場所を選定し、更に器用にそこにある植物を使って寝床を作っていく。
「この樹皮を焼くと、動物の忌避物質が出るんだ。だからこの中に居れば恐い獣は来ないから」
「地面に直接寝ると体温が奪われる。寝床はそのために必要なんだよ」
スザクはロロにこうしろああしろとは絶対言わない。
家にいたときと同じように、ただ自分が何をしようとしているのか、その行動と背中で語るだけだ。
スザクから離れることは自殺行為だと知っていた。
家に戻ろうとしてスザクから離れて、獣に遭遇した恐怖はまだ癒えていない。
だから、結局スザクのそばにいるしかないのだ。
家に帰れないのなら仕方がない。スザクのそばにいなくてはならないのなら仕方がない。
石を組み立て、かまどを作ろうとしているスザクの石運びを手伝うため手を伸ばした。
と。スザクは驚いた表情をロロに向けたが、手を出したことをロロが後悔するより早く、「ありがとう」と礼を言われた。
◆
順応力の高い子どもにとっての1カ月は長くて短い。
今までのロロにとっては信じられないくらい、走って動いて笑って怒った。
その一つ一つを見守り受け止めてくれる相手がいることが、楽しかった。
本来、外で動くことは不得手なロロだったが、他にすることがないのだ。
そう言い訳しながらも、いつの間にか無人島での生活がどんどんどんどん楽しくなっていった。
時間の感覚も失うほど。
「1カ月、よく頑張ったね」
だから、いつものように、その日採った魚を焼いての夕食の時間、スザクから唐突に言われた言葉にロロは面食らった。
「…1カ月?」
「そう。1カ月。ルルーシュと約束した1カ月だよ」
嬉しいはずなのに。なぜなのか。この時間が終わることを淋しいと感じる自分がいる。
「明日にはルルーシュに会えるよ」
ぽかんと口を開けたロロにスザクは微笑む。
「ルルーシュも絶対ロロに会いたがっているよ。僕が我儘言って引き離したからね」
この無人島に来る前日、ルルーシュとスザクが何やら言い争いをしていたことをロロは思い出す。その原因は自分だったはずだ。
「…スザクは、ボクにどうして欲しかったの?」
ルルーシュとスザクは、子供の目から見ても仲の良い、仲の良すぎる両親だ。その二人が自分のために1カ月も別れ別れだったのだ。
自分の淋しさしか考えていなかったが、ロロは唐突にその事実に気づいた。
「…ロロが、走ってくれて嬉しかったよ」
「?」
「ロロが、自分で『ルルーシュに会いたい』って、走ってくれたことが嬉しかった」
スザクの言葉はよく解らない。解らないけど。
島での最後の夜、ロロは乾草の敷いてある寝床の上、スザクの腕の中でそのぬくもりを感じながら眠りに落ちた。
このぬくもりを一人占めできるのは、これが最後だと知っていた。
◆
安らかな眠りは懐かしい人の声で破られた。
言い争っているような声だ。
スザク以外の声を聞くのは久しぶりだ。
そう思ってから、ロロは飛び起きる。
「だから、ロロが起きるってばっ」
「1カ月お預けを喰らったんだぞ、オレはっ」
目を開けると、そこにはロロの両親、ルルーシュとスザクが家にいる日常と同じように2人揃っている。
そして。これまた頻繁に見かけたように、キスを交わしている。
いや。今日は少しいつもと違う。
ロロたちの前ではいつも、軽く触れるだけのキスなのに。今それは深く交わっている。
ルルーシュがスザクの頬を両手で包み込み、離す気配がない。
眉間にしわを寄せ、うめき声をあげているのはスザクだ。
鼻から抜ける、苦しげな、だけどどこか気持ちよさそうな声。
単純な腕力ではスザクのほうが強いはずなのに、なぜか両親のスキンシップはいつでもルルーシュ主導だ。
実を言うと、それがロロには不思議だったが、今はなぜかムカムカする。
「ルルーシュ父さん!」
2人のキスをそれ以上見ていたくなかったロロは、ルルーシュに体当たりするように抱きつく。
ルルーシュの手からスザクが離れてホッとしたが、頬に熱が集まったようなスザクの表情にもムカムカした。
「ロロ、元気そうで良かった」
だが。それもルルーシュの自分を覗き込む視線に霧散する。
そう。いつも通りの日常が戻ってくる。
優しくて綺麗で誰よりも大切なルルーシュ父さんとの生活。文化的な日常が、戻ってくるのだ。
◆
「ロロ、ずるいわ。スザク父さまをずっと独占して」
ナナリーの言葉にロロはむっとしか。それはこちらのセリフだ。
「ナナリーこそずるいじゃないか、ルルーシュ父さんを一人占めしてっ」
「私は、スザク父さまのほうが良かった」
ナナリーとロロは双子の姉弟だが、性別が反対の方があっていたのではと思える程、行動パターンが正反対だ。
「ルルーシュ父さま、うるさいんだもん、行儀とか女の子が、とか」
「スザク父さんは野蛮人だよ」
「あら。ワイルドな魅力でしょ。いいなあ、ロロは」
いつもなら延々と続く姉弟の言い争いだが、確かに、ロロは無人島での生活を楽しんでしまっていた。
その中でいかにスザクが頼りになるかも知っていた。
ナナリーの言葉に最後まで反抗しきれないのは、ロロの素直さの現われだが、そんなロロの様子にナナリーは何を悟ったのか、むっと頬を膨らませた。
「言っとくけどね、ロロ。スザク父さまの一番は私だからね」
女はどうしてこう面倒くさいのか。10歳といえど、女は女だ。いつも言い負かされている恨みもあった。
「…スザク父さんの一番はルルーシュ父さんだろ」
その一言に、ナナリーの目がみるみる潤みだす。
そしてロロも。自分の言葉にダメージを受けていた。
「ロロの意地悪っ」
ナナリーは言い捨てると自分の部屋へと戻っていく。
ナナリーを言い負かすのは珍しいことなのに。ロロには爽快感はなかった。
◆
「ロロ、ずいぶん変わったな。確かに、たくましくなった」
「そう見える?」
「ああ」
「なら、無理言って君から引き離して良かったかな」
1カ月ぶりに会う万年恋人のルルーシュとスザクは、当り前のようにダブルサイズのベッドに2人で横になっている。
「…オレがロロやナナリーを愛するのは、あの子たちにとって負担か?」
「? どうしたの?ルルーシュ?」
「…ナナリーはお前の方が良いって…」
ナナリーもロロも同じくらい溺愛しているルルーシュだが、甘えたがりのロロと違い、ナナリーは独立心の強いしっかりした女の子だった。例えその外見が砂糖菓子のように愛らしくても。
「良いことじゃない。ナナリーもロロも、僕らの手の中からいつか、飛び立たなくちゃならないんだから」
「…愛せなかったぶん、どこまでもどこまでも愛してやりたい」
呟きは真摯だ。ついついほだされそうになるが。
「ダメだよ、ルルーシュ。君の『それ』は呪術に通じるほど強いんだから。ダメだよ」
「…解っている。解っているんだが…」
スザクはルルーシュの唇に己のそれを重ねる。
「大丈夫。傷は癒えるよ。そして、必ず。僕たちの手から離れて、一人の人間として立つよ」
「…淋しい」
「…ルルーシュ…」
これではどちらが子供か判らない。どちらが癒されているのか判らない。
だけどきっと。
「僕は、僕だけは、ずっと君の傍にいるから…」
スザクはしなやかな両腕で、ルルーシュを包み込んだ。
今まで苦手な地雷だった子供話…。どんどん変な原野を開拓しているなあ。
えと。一応真面目な設定もあるのですが、それは追々に。(つまり、続ける気ありあり)
あ。ルルもスザクも男です。性転換はなしです。
以下、書き落とし文。
◆
ロロは悲鳴とも罵倒ともつかない引きつった声を上げた。
目の前には正体の分からない獣が、うなり声をあげながらロロを威嚇している。
ロロは自分が冷や汗をかいていることさえ気づけず、大きな目を更に見開いて獣を見つめることしかできない。
あの鋭い歯に噛み千切られるのか。あの生暖かい口内で咀嚼されるのか。
たった10年しか生きていない。その人生が、こんなところで終わるのか?
死にたくない!まだ何もしていない!
生まれて初めて命の危険に晒されたロロは痛切に思った。
死にたくない!
脳裏に浮かんだのは、大好きな大好きなルルーシュ父さんの顔。
綺麗で優しいルルーシュに会えなくなるのは嫌だ。
がくがく震える脚に、命令する。
動け!動け!
全身が心臓になってしまったかのように、鼓動の音だけで体中がいっぱいになる。
そして。
瞬間の空白を感じた瞬間、ロロは駆けだしていた。
精一杯、両脚を動かす。
しかし、そこは舗装されているどころか、森の中、どこに道があるかさえも判らない悪路。
坂有り岩有り根っこ有りの障害物オンパレードのオフロードだ。
追われている恐怖に耐えながら、ロロは走る。ひたすら走るが。
同年代の子供に比べても体力もなく不器用なロロは、木の根っこにつまづいた。
走っていた勢いのまま、軽い体が空を飛ぶ。
もうダメだ。
そう思った瞬間に、ふんわりと、あり得ない柔らかさで宙を浮いていた体を受け止められた。
「ごめんね。ロロ、もう大丈夫だよ」
耳元で囁かれた言葉に緊張の糸がぷっつり切れた。
◆
文明社会から突然切り離されたロロは不満だらけだった。
ふかふかのベッド。暖かく清潔な家。優しい笑顔のルルーシュ。
ロロを、彼の大好きで大切な世界から無理やり引きはがした野蛮人は、本当なら近くにいるのも嫌なのだけど。でも、人の存在しない森の中で、彼しか頼る相手はいない。
「よく走れたね」
森の中を走ったときに手足は小さな草や小枝で傷ついていた。一つ一つは掠り傷だが、安心した途端、ひりひりと痛みだす。
ぶすっとしたままのロロの傷をスザクは丁寧に手当てしていく。
「…ルルーシュに、会いたいから」
長い時間があいてからのロロの答えを、だがスザクは間違えなかった。
「うん。ルルーシュに会いたかったから、頑張って走ったんだね」
向けられる笑顔にロロはむっとする。
ルルーシュはロロのことをとても大切にしてくれている。愛されていると判る。
だけど。
ルルーシュのスザクに対する笑顔は、別物だ。
どんなにルルーシュがスザクのことを好きなのか、見ているだけで解るから。
だからロロはスザクが嫌いなのに。
「1カ月だよ。それがルルーシュとの約束の期間だから。頑張ろうね、ロロ」
あからさまな拒否を示すロロをスザクは笑顔で受け入れる。
それは、家でも変わらないはずなのだが。
どんなに反抗しようとも、スザクは変わらない。文明から切り離されたこの無人島では、その存在を頼もしく感じてしまった。
◆
地球最後の人間になろうとも、スザクなら生き残れるかもしれない。
1週間と経たないうちに、ロロも無人島での生活に慣れていく。
スザクは極めて優秀で頼りがいのあるサバイバルの先生だった。
安全と快適。
スザクが最初にしたのは住処を造ることだった。周りの地形を確認し、獣たちから身を守れる場所を選定し、更に器用にそこにある植物を使って寝床を作っていく。
「この樹皮を焼くと、動物の忌避物質が出るんだ。だからこの中に居れば恐い獣は来ないから」
「地面に直接寝ると体温が奪われる。寝床はそのために必要なんだよ」
スザクはロロにこうしろああしろとは絶対言わない。
家にいたときと同じように、ただ自分が何をしようとしているのか、その行動と背中で語るだけだ。
スザクから離れることは自殺行為だと知っていた。
家に戻ろうとしてスザクから離れて、獣に遭遇した恐怖はまだ癒えていない。
だから、結局スザクのそばにいるしかないのだ。
家に帰れないのなら仕方がない。スザクのそばにいなくてはならないのなら仕方がない。
石を組み立て、かまどを作ろうとしているスザクの石運びを手伝うため手を伸ばした。
と。スザクは驚いた表情をロロに向けたが、手を出したことをロロが後悔するより早く、「ありがとう」と礼を言われた。
◆
順応力の高い子どもにとっての1カ月は長くて短い。
今までのロロにとっては信じられないくらい、走って動いて笑って怒った。
その一つ一つを見守り受け止めてくれる相手がいることが、楽しかった。
本来、外で動くことは不得手なロロだったが、他にすることがないのだ。
そう言い訳しながらも、いつの間にか無人島での生活がどんどんどんどん楽しくなっていった。
時間の感覚も失うほど。
「1カ月、よく頑張ったね」
だから、いつものように、その日採った魚を焼いての夕食の時間、スザクから唐突に言われた言葉にロロは面食らった。
「…1カ月?」
「そう。1カ月。ルルーシュと約束した1カ月だよ」
嬉しいはずなのに。なぜなのか。この時間が終わることを淋しいと感じる自分がいる。
「明日にはルルーシュに会えるよ」
ぽかんと口を開けたロロにスザクは微笑む。
「ルルーシュも絶対ロロに会いたがっているよ。僕が我儘言って引き離したからね」
この無人島に来る前日、ルルーシュとスザクが何やら言い争いをしていたことをロロは思い出す。その原因は自分だったはずだ。
「…スザクは、ボクにどうして欲しかったの?」
ルルーシュとスザクは、子供の目から見ても仲の良い、仲の良すぎる両親だ。その二人が自分のために1カ月も別れ別れだったのだ。
自分の淋しさしか考えていなかったが、ロロは唐突にその事実に気づいた。
「…ロロが、走ってくれて嬉しかったよ」
「?」
「ロロが、自分で『ルルーシュに会いたい』って、走ってくれたことが嬉しかった」
スザクの言葉はよく解らない。解らないけど。
島での最後の夜、ロロは乾草の敷いてある寝床の上、スザクの腕の中でそのぬくもりを感じながら眠りに落ちた。
このぬくもりを一人占めできるのは、これが最後だと知っていた。
◆
安らかな眠りは懐かしい人の声で破られた。
言い争っているような声だ。
スザク以外の声を聞くのは久しぶりだ。
そう思ってから、ロロは飛び起きる。
「だから、ロロが起きるってばっ」
「1カ月お預けを喰らったんだぞ、オレはっ」
目を開けると、そこにはロロの両親、ルルーシュとスザクが家にいる日常と同じように2人揃っている。
そして。これまた頻繁に見かけたように、キスを交わしている。
いや。今日は少しいつもと違う。
ロロたちの前ではいつも、軽く触れるだけのキスなのに。今それは深く交わっている。
ルルーシュがスザクの頬を両手で包み込み、離す気配がない。
眉間にしわを寄せ、うめき声をあげているのはスザクだ。
鼻から抜ける、苦しげな、だけどどこか気持ちよさそうな声。
単純な腕力ではスザクのほうが強いはずなのに、なぜか両親のスキンシップはいつでもルルーシュ主導だ。
実を言うと、それがロロには不思議だったが、今はなぜかムカムカする。
「ルルーシュ父さん!」
2人のキスをそれ以上見ていたくなかったロロは、ルルーシュに体当たりするように抱きつく。
ルルーシュの手からスザクが離れてホッとしたが、頬に熱が集まったようなスザクの表情にもムカムカした。
「ロロ、元気そうで良かった」
だが。それもルルーシュの自分を覗き込む視線に霧散する。
そう。いつも通りの日常が戻ってくる。
優しくて綺麗で誰よりも大切なルルーシュ父さんとの生活。文化的な日常が、戻ってくるのだ。
◆
「ロロ、ずるいわ。スザク父さまをずっと独占して」
ナナリーの言葉にロロはむっとしか。それはこちらのセリフだ。
「ナナリーこそずるいじゃないか、ルルーシュ父さんを一人占めしてっ」
「私は、スザク父さまのほうが良かった」
ナナリーとロロは双子の姉弟だが、性別が反対の方があっていたのではと思える程、行動パターンが正反対だ。
「ルルーシュ父さま、うるさいんだもん、行儀とか女の子が、とか」
「スザク父さんは野蛮人だよ」
「あら。ワイルドな魅力でしょ。いいなあ、ロロは」
いつもなら延々と続く姉弟の言い争いだが、確かに、ロロは無人島での生活を楽しんでしまっていた。
その中でいかにスザクが頼りになるかも知っていた。
ナナリーの言葉に最後まで反抗しきれないのは、ロロの素直さの現われだが、そんなロロの様子にナナリーは何を悟ったのか、むっと頬を膨らませた。
「言っとくけどね、ロロ。スザク父さまの一番は私だからね」
女はどうしてこう面倒くさいのか。10歳といえど、女は女だ。いつも言い負かされている恨みもあった。
「…スザク父さんの一番はルルーシュ父さんだろ」
その一言に、ナナリーの目がみるみる潤みだす。
そしてロロも。自分の言葉にダメージを受けていた。
「ロロの意地悪っ」
ナナリーは言い捨てると自分の部屋へと戻っていく。
ナナリーを言い負かすのは珍しいことなのに。ロロには爽快感はなかった。
◆
「ロロ、ずいぶん変わったな。確かに、たくましくなった」
「そう見える?」
「ああ」
「なら、無理言って君から引き離して良かったかな」
1カ月ぶりに会う万年恋人のルルーシュとスザクは、当り前のようにダブルサイズのベッドに2人で横になっている。
「…オレがロロやナナリーを愛するのは、あの子たちにとって負担か?」
「? どうしたの?ルルーシュ?」
「…ナナリーはお前の方が良いって…」
ナナリーもロロも同じくらい溺愛しているルルーシュだが、甘えたがりのロロと違い、ナナリーは独立心の強いしっかりした女の子だった。例えその外見が砂糖菓子のように愛らしくても。
「良いことじゃない。ナナリーもロロも、僕らの手の中からいつか、飛び立たなくちゃならないんだから」
「…愛せなかったぶん、どこまでもどこまでも愛してやりたい」
呟きは真摯だ。ついついほだされそうになるが。
「ダメだよ、ルルーシュ。君の『それ』は呪術に通じるほど強いんだから。ダメだよ」
「…解っている。解っているんだが…」
スザクはルルーシュの唇に己のそれを重ねる。
「大丈夫。傷は癒えるよ。そして、必ず。僕たちの手から離れて、一人の人間として立つよ」
「…淋しい」
「…ルルーシュ…」
これではどちらが子供か判らない。どちらが癒されているのか判らない。
だけどきっと。
「僕は、僕だけは、ずっと君の傍にいるから…」
スザクはしなやかな両腕で、ルルーシュを包み込んだ。
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